
Patient-Involved Nursing
患者参加型看護
Philosophy
看護部の理念・基本方針
理念
Ⅰ 患者・家族の意思を尊重した看護を行います
Ⅱ 社会の要請に対応した看護を行います
Ⅲ 看護の専門性を発揮し、チーム医療を推進します
方針
1. 患者参加型看護の実践
患者の意思を尊重し、医療をうける自らの目的を選択・達成できるように、看護の全てのプロセスを開示・説明し、合意形成を図りながら患者中心の看護をおこなう
2. 看護職の成長への相互支援体制
医療の進歩、社会の要請に対応できる専門職業人として能力を維持・開発できるよう、職場環境を整える
3. 自由な中での新しい看護の創造
より質の高い看護が提供できるよう、最新の知見を活用して看護を実践するとともに、新たな専門的知識・技術の開発に努める
看護部目標と「患者参加型看護計画」の推進
令和6年度 看護部目標
当院看護部では、看護の責務と戦略的な取り組み目標として、次の5つを掲げております。

01
看護のインフォームドコンセントの推進
患者の視点を尊重し、情報を共有し、合意を得るプロセスを強化します。
02
看護サービスの質の向上
質と効果、効率性の向上を目指し、より良い看護サービスを提供いたします。
03
看護サービスの質の保証
医療の水準を維持し、安定した質の高いサービスを保証いたします。
04
看護実践能力の向上
看護職員の人材育成を通じて、実践能力の向上を図ります。
05
経営改善への積極的な参画
組織のエンパワーメントを推進し、経営改善へ積極的に参画いたします。
「患者参加型看護計画」 推進の意義
患者参加型看護計画のあり方として、患者自らが看護の全過程に積極的に参加することが推進されています。
看護計画は患者の意思を反映し、患者が主体的に参加できるように開示され、看護師と共に具体策を実施することが求められます。
看護計画は患者のものであるという考えを中心に 据え、患者が実施できた内容とそれを支援するための看護実践を明示することが重要です。この考え方は、看護過程記録記載上の取り決めに定められています。
生命倫理の基本は、「患者の身体は、患者自身のもの」という考え方であり、看護の全過程は患者の同意の下に進められる必要があります。
患者は、自身の健康状態について十分な情報を得る権利を持っています。
患者と信頼関係を築き、看護を計画し、実践、評価することで、より個別性の高い適切な看護を提供することが可能になります。
患者は、望む医療を選択し自己決定するために、医療提供者と情報を共有し、信頼関係の下で共同して健康問題に取り組むことを望んでいます。また、患者の権利を擁護することが重要です。
※協同:共同と同義で、ともに心と力を合わせて助け合いながら仕事をすることを意味します。
看護者は個人情報を得る際にその利用目的を説明し、看護のインフォームドコンセントが重要となります。
患者の同意を得てから看護実践内容を提供することが求められます。
※看護のインフォームドコンセント:看護過程の全段階において看護者がどのようなサービスを提供するのかを患者や家族に説明し、彼らからの希望や意見を受けて合意することです。
患者が主体的に看護計画に参加することは、「看護とは何か」を理解し実感する機会を提供します。
看護計画は、患者との仕事の契約であり、計画通りの看護が提供されることを前提としています。
Practical Methods
実践方法
医療の共有と合意
「患者参加型看護計画」は、患者が自分の健康に関する意思決定に積極的に関与することを促進します。
このプロセスにおいて重要なのが「看護のインフォームドコンセント」です。これにより、看護の全段階で患者・家族に提供されるサービスについて説明し、彼らの希望や意見を取り入れて合意を形成します。
1.生命倫理
患者の身体は患者自身のものであることを基本に考える。
2.契約(計画イコール実施)
看護計画を説明し、合意の上で実施する。計画通りに実施されなければ約束を破ったことになる。
3.専門職であることのアピール
看護が身体労働だけでなく、計画的な思考に基づいていることを患者に理解してもらう。
これらを通じ、患者は自分の健康管理に責任をもちつつ、医療提供者と協力して最適なケアを目指します。

看護計画の 説明と作成
01
看護計画は、患者さんの状況に合わせて計画的に看護を提供するものであり、1週間サイクルで立案・実践・評価を行うことを説明します。
02
患者さんがどのように医療に参加できるかを説明し、看護部の資料を用いて患者ごとの説明用紙を工夫しながら、患者自身が積極的に医療に関与できるようサポートします。
03
看護計画は、患者さんと相談した上で実施され、入院診療計画書にその旨が記載されるとともに、医療情報システムを活用して患者・家族からの署名を得ることで、共同の取り組みを確認します。

看護計画の説明と作成
インタビューの目的は、質の高い看護を提供するために患者様の個別情報を把握することです。
以下の点についてインタビュー開始前に説明し、許可をいただきます。
1.個人情報の取り扱いについての説明
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良い看護を提供できるように個人情報を把握する必要があることを説明します。
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個人情報をどの範囲の人々(家族・キーパーソン等)と共有してよいか確認します。
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答えたくないことは答えなくても良いことを保証します。
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個人情報取り扱いの守秘義務について説明し、安全に管理することをお伝えします。
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必要に応じて情報を医療者間で共有することを説明します。

2.看護を提供するために個別情報を把握する必要があること
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患者の体調に配慮しながらインタビューを進めます。
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面接室など落ち着いた環境で、プライバシーに配慮し、患者が質問しやすい雰囲気をつくります。
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目標を引き出すような誘導的、脅迫的な聴き方は避けます。
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患者の生活と価値観(人生にかかわる情報)を十分に聴き、患者の意思を尊重します。
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得られた情報は、PCに入力し、患者の確認を得ながら進めることが望ましいです。
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これらを患者様に十分にご説明し、安心していただけるよう配慮しながらインタビューを進めます。

看護計画を立案・共有
1.アセスメント
アセスメントとは、看護計画の基礎として、患者の病状に必要な看護を見定めるために行う評価プロセスです。
この評価は、患者とのインタビューを通じて彼らの生活や価値観を理解し、それに基づいて看護の方向性を判断することを目的としています。アセスメントの結果は、患者が理解できる言葉で説明され、その後に看護記録に記載されます。
2.看護目標
次に、設定するのが看護目標です。アセスメントで得た情報を基に、患者と相談しながら目標を決定します。この目標は、患者にとって理解しやすい言葉で表現され、共有されます。
また、具体的で評価可能な内容とし、一つの目標に一つの内容を含めることが大切です。特に、患者の意向に沿った小目標を設定し、行動レベルで具体的に表現することが重要です。
3.具体策の立案
続いて、具体策の立案に移ります。看護目標を達成するために、どのよう に進めていくかを具体的に計画します。この段階でも、患者と協力して計画を立てることが重要です。
具体策では、患者と看護師のそれぞれがどのような役割を果たすかを明確にし、確認し合います。これにより、患者自身が行うべきことと看護師がサポートする部分が明確になり、双方の協力がスムーズに進むことを目指します。
4.共有
最後に、作成した看護計画書は、患者に渡し、日々確認できるようにします。これは患者が自身の看護計画に主体的に関与できるようにするためです。
計画の一部が未開示の場合は、患者の状況や時期を考慮しながら開示の可能性を模索します。また、カンファレンスなどで未開示の理由を共有・明示することも忘れずに行います。
日々の看護計画活用
日々の看護計画の活用において、看護師はまず計画表を基にその日のスケジュールを確認します。これにより、その日の治療や生活状況について患者と情報を共有し、適切なケアを提供するための準備を行います。計画表は、患者の状態に応じた具体的な行動を記したものですので、看護師はこの指針を用いて業務を遂行します。
また、看護師は患者が計画通りに具体策を実施できているかどうかを常に確認します。実施に困難がある場合、患者の体調や生活状況をアセスメントし、家族や他の看護スタッフと協力して必要な支援を行います。これにより、患者が計画を無理なく実行できるよう調整されています。
一日の終わりには、その日行われた具体策の実施状況を患者と評価します。実施できなかった部分については、原因を探り、次の看護計画にどう取り入れるかを患者と共に具体的に見直します。この評価内容は看護記録として詳細に残し、今後のケアに役立てられます。こうして計画表は、日々の看護実践を支えるとともに、継続的なケアの質向上に寄与しています。
看護の評価
看護の評価は、患者の入院中に設定された目標がどの程度達成されたかを確認するプロセスです。この評価は、患者やその家族とともに行われ、その結果を次の看護計画に活用します。評価は通常、1週間のサイクルで実施され、目標の達成度によって継続するか、修正するか、あるいは新たな目標を設定するかを判断します。これにより、看護計画がより効果的になり、患者の病状に応じた適切なケアを提供することができます。
評価は患者の評価視点を重視します。具体的には、患者とその家族が治療に関する情報を十分に理解し、自発的に行動できるようにすることが求められます。また、看護師の支援がどのような意味を持ち、患者が看護計画に主体的に参加しているという実感を得られることが評価の重要な側面です。さらに、評価の結果を患者と確認し、それを文書化して同意を得ることが、患者の権利を尊重した看護の実践に繋がります。
このように、看護の評価は患者の状態に即した柔軟かつ的確なケアを提供し、治療の効果を高めるための重要なステップとなります。

History
当院における個別看護実践への取り組みの歴史

1996年
患者の意思・目標尊重の計画
1997年
目標達成思考への変更目標共有の研修
1998年
目標達成思考への変更後の評価
1999年
IC 情報開示の研修
2000年
記録監査
2001年
記録検討委員会の発足
2002年
看護計画共有・開示の推進用語集の作成
2003年
患者参加型看護計画推進ガイドラインの作成
2004年
患者参加型看護計画の実践評価
2005年
記録監査システムの構築
